2010.5.10
昨日(5/9)の産経新聞『土・日曜日に書く』より抜粋---平安時代末期の武将で公卿だった平重盛が語ったと伝えられる有名なセリフを思いだした。いわく、「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」---父清盛と後白河法皇との間に立ち、悩み続けた重盛の言葉と言われている。産経新聞では、重盛の言葉を引用し、普天間問題にさ迷う鳩山首相を例えて述べている。
普天間問題を論じるつもりはないが、この重盛の言葉の例は、厳しい環境にある企業人事の方にも、正に当てはまるのではないだろうか。
企業の業績が下降線を辿る中、新聞紙上を賑わした非常時の人件費削減策として、いろいろな施策が採られた。代表的なものは、給与・賞与のカット、採用の抑制、人員削減或いは配置転換等だ。個々の対応策の是非については状況に応じて異なるが、経営者としては、組織の維持を図るために考えなければならなかった施策だ。
いずれの施策がを採られる場合でも、その推進役は人事部門となる。
業績好調時に採られる施策であれば従業員からも受け入れられやすいが、非常時に採られる施策というものは従業員にとっても厳しいものであり、その推進に際しての苦労は大変なものである。
忠を尽くせば、経営者からの信頼を得ることはできるが、従業員から反発を受ける。逆に、従業員の気持ちを慮れば、経営者からツメの甘さを指摘される。いずれにしても辛い立場だ。
この両者のバランスを採るためにどうするのか。
経営者は朝礼暮改である。朝述べたことがその日のうちに変わる。変わることは仕方ない。朝決めた時から環境が変われば、変えなければならないのが経営だ。とすると、経営者に忠を尽くすためには、以前以上に従業員との関係をより強くするべきである。現場との距離を短くし、日頃から従業員の声を無視しない仕組みが必要であろう。すなわち
「忠ならんと欲すれば仁ならず、仁ならんと欲すれば忠ならず」
とならぬよう、非常時に備えて、平時から現場とのコンタクトを強めるということである。