Column コラム
人材育成学会研究会終了後記
2010.12.11

11月29日(月)人材育成学会研究会が無事終了した。
個人のブログの中で研究会後記を書いていこうと考えていたが、内容的に非常の中身の濃い内容であり、真面目に会社のコラムの中で記載することにした。

当日は、若干のキャンセルの方を入れても、70名弱の方にご参加いただいた。テーマは既にご案内している通り、待ったなし「グローバル化と企業人材戦略」というテーマである。
戦略系コンサルタント、キャメル・ヤマモト氏、人材開発コンサルタント、ジェーション・ダーキー氏、企業の立場からエーザイの北川健二氏、更に、問題提起と全体討論を担当していただく日本CHO協会の須東氏の計4名の登壇者である。

まず、気になったのが、参加者の内訳。これは須東氏とも同意見であるが、人事や人材開発部門の方の参加が少ないこと。特に、研究会の意図が育成に焦点を当てていることからも人材開発や人材育成部門の方に沢山参加してほしかったというのがホンネである。その反面、意外と多かったのが、コンサル関係の方。コンサル関係の方は、クライアントが直面する課題であるという認識の元で、どう取り組んでいるのかという点から情報収集をしているという所であろうか。

その他に気になったのか、意外と学校関係者が目立ったこと。今回は月曜日の午後開催ということで、どちらかと言えばビジネス界をターゲットに絞って日程を設定している。平日の午後ということで、大学等教育機関は授業の関係で出席は難しいだろう、、と考えていたが、皆さん、何とか都合を付けてご出席いただいたということか。その中でも出色だったのが、高校の先生が参加されていたこと。全体討論の中で質問をされていたが、グローバル人材の必要性が叫ばれている中で、高校教育として何が必要なのか、どうすればいいのかという視点を持って参加されたということである。高校の先生がそういう視点を持って教育を行ってくれれば、これからのグローバル人材育成にとっては非常なる光明である。そういう視点持った先生が増えてくれることを切に祈るばかりである。

前置きが長くなったが、そういう状況の中で研究会は行われた。

最初に、日本CHO協会の須東氏の問題提起。須東氏は3つの論点から問題提起をしている。グローバリゼーション3.0の中で、まず、マネジメントのあり方はどうあるべきなのか、次にグローバル人材をどのように育成していくのか、最後が、人事部はこれからどうなっていくのか、の3点である。いずれも、重要な点であるが、特に、人事部の組織として位置づけがこれからどうなるのかという視点は非常に興味が深い点である。

この論点に対して、まず、デロイトのキャメル・ヤマモト氏が人材マネジメントのあり方についてスピーチを行った。ヤマモト氏は、グローバリゼーション3.0の世界では、人材の仕分が始まっているとしている。このため、しっかりとしたグローバルリーダー像を持つ必要性が高まっており、その具体像を3つの要素で説明している。1つ目が外交力、2つ目が専門性、3つ目がリーダーシップコンピテンシーである。
1つ目の外交力とは、「さまざまな外国人の間にまぎれこんで、交わりながら、いろいろなことを成し遂げていく」という能力である、勿論、その前提には英語力が必須であるが、外国人とまざりグローバルな目線を磨く人脈力や世界情勢への感度を高めた情勢判断力が必要となってくるとした。
2つ目が専門性。専門性とは、あなたの企業で通用する専門性から世界で通用する専門性が重要になってくるとしている。この専門性は、職能の専門性、事業の専門性や地域の専門性で捉えれば良く、それをいかに経験を通じて獲得していくのかが重要となってくる。
最後が最も重要となるリーダーシップである。リーダーシップとは、目的に向けて人々を動かす力で、「構想力」、「構造力」、「行動力」から構成されるとしている。
この3つの要素を将来の企業幹部となるべき人材にいかにして身に付けさせるかが、正に、人材マネジメントの課題となっているとしている。

次に登壇したのは、人材開発会社を経営するアメリカ人、ダーキー氏。彼は多くの日本企業に対してグローバル研修や語学研修を実施しており、その点を踏まえスピーチを行った。特に、印象深かったのは、殆どの日本企業が間違ったグローバル人材育成を行っており、グローバル人材の育成は英語教育だけでは不十分であり、それ以外のマネジメントの能力がより重要であるとしている。言い換えれば、英語はできないが、仕事ができる人材の方がグローバル化教育を受けるに相応しい人材としている。

最後が、エーザイの北川氏である。
実は、北川氏は人事経験者ではなく、別の部署から人事機能を管轄する部署のトップに任命された人である。期待される人事部が期待通りに成果を出していくことができなければ、必要な人事機能は将来的には人事部が持つ必要もない、という時代に入ってきたことがわかる実例として考えてほしい。

簡単ではあるが、以上の4名の方を中心に研究会は実施された。
今日の研究会に参加された方は、今置かれている状況の理解とこれから進むべき方向性を理解する道標となったのではと考えている。