Column コラム
雇用の負の連鎖をどうするのか
2010.8.13

雇用を始点とした負の連鎖をどう断ち切るのか・・?
これからの成長施策の中で『雇用』をどう位置づけていくのか、企業にとっても重要な判断を迫られてる。

企業は定年年齢の延長を行ってきた。高齢化の進展、若年層の減少という掛け声のもとで、延長を行うことが社会的責任のように位置づけてきた。実施された具体策は、純粋に定年の年齢を引き上げたケースもあるし、一旦退職して契約社員として継続勤務したケースもある。いずれにしても、『年金支給年齢の引き上げ』に伴う対応策という必然性の中で、将来の影響を考えずに行われてきた。

これは企業側から見ても、団塊の世代が定年年齢を迎えることによる大量のスキル流出を防ぐためにも都合のよいタイミングだった。定年年齢の延長や継続雇用に伴う補助金もそれを支援するための仕組みとなっており、世代交代は徐々に行なわれれば良いという想定であった筈。ここまでは・・・

その後、リーマンショックが発生した。
企業が取った緊急避難措置としては総人件費の削減である。削減策の優先順位としては、新たに入社してくる人員の抑制、給与等報酬額の削減、生産設備の海外移転、最後に在籍する人員の削減である。

結果、どういうことが起こったのか。2つの『低下』が起こったのである。

一つは、20代、30代若年層の就職機会が減少した結果としての購買力の低下、もう一つは企業内で60歳を超えた人員の増加による企業の成長余力の低下である。
購買力の低下は、イコール、モノが売れないということであり、結果として企業の業績に跳ね返ってくる。もっと影響が大きいのは企業の成長力の方である。
リーマンショック以降、企業は国内市場に見切りをつけ、海外市場の開拓を進めようとしている。その中で必要となる人材はグローバルな人材であり、グローバルな視点であり、グローバルな行動力である。若年層の採用を抑制し、政府の施策に合わせて高齢化を進めてきた企業に、グローバルな人材は潤沢とは言えない。結果として、ここでも企業の業績に跳ね返ってくる。

購買力の低下⇒企業の業績の低下⇒総額人件費の抑制(高齢者社員の継続的雇用と若年層社員の増加抑制)⇒企業の成長力の低下⇒収入の低下⇒購買力の一層の低下・・・・
国の施策に安易に乗り、補助金という名目のもとで奨励してきた施策のツケが出てきている。まさに、負のスパイラル現象だ。

この流れを弱めるためには、何があるのだろうか・・
定年年齢を一律延長するのではなく、自社のみで継続雇用するやり方から他社での雇用へ、大企業から中小企業への人員の移転を積極的に行っていくべきである。勿論、企業として、50歳前後の社員を対象に60歳以降の仕事、キャリアをしっかり考えさせる研修やセミナーを実施する。今までとは異なる会社や組織の中で自分の持つスキルを発揮することに「働き甲斐」を感じてもらう必要がある。

とにかく、どこかの時点でこの負のスパイラルを断ち切らないと、企業にも日本にも浮上するチャンスは少ない。