Column コラム
2012-5-11

今年の春先の日経新聞に気になる記事が出ていた。
記憶によれば「経営の視点」というコラムの欄だったと思う。

そのコラムの中で、アメリカのGMが、昨年、過去最高の純利益を上げたこととその理由が述べられていた。
その要因としては、日本車の独壇場だったアメリカの車市場でコスト改善を進み巻き返しができたことを挙げられていた。これはリーマン・ショックを契機に賃金や年金の切り下げを行い、人件費圧縮をせざるを得なかった結果とも言える。また、人件費が如何に、企業の収益を左右するのかを再確認できた証明でもあった。

翻ると、今年になって中国の人件費の上昇を報告するニュースや記事が目立つようになってきた。
それによると年平均で15~20%も賃金が上昇しており、このままで行くとGM破綻を機に賃金が低下傾向にあるアメリカを15年頃には上回るだろうと予想されている。日本の賃金もリーマン・ショック以降、横ばいが続いており22年頃には中国と同水準となると言われている。

中国は今や世界の工場と言われ、アップルのiphoneもその全てが中国で作られており、低賃金の労働力を活用したビジネスモデルの成功例としても語られている。
その中国での人件費上昇のニュースである。
このニュースは、『設計や開発は本国で、製造は人件費の安い中国で』という仕組みが使えなくなる日が近いことを物語っている。

企業は立地条件を比べて、機敏に動くだろう。日本も国内を含めて、戻る企業も出てくるだろう。また、グローバル化が進むと定住地を持たない企業も出現し、世界各地で見直しがなされるだろう。

日本企業は、「グローバル化の推進」≒「中国への工場移転」と考えてきたフシがある。
これからは単純ではない。
人件費上昇の問題は、新たな製造拠点となりつつある東南アジア等の国々でも必ず生じてくる。
横並びで「海外への工場移転」を考える時代は終わりを迎えるであろう。
PC等の精密機械は、「メード・イン・ジャパン」ブランド力を活かすため、中国での生産を国内の生産に切り替えた企業も出てきた。確か、Lenovoだったと記憶している。

「何のために」・・・一律に中国、東南アジアではなく、日本国内への回帰を含めた本当の意味でのグローバルな見直しが必要になってくるであろう。