Column コラム
2012-1-26

先日、ある勉強会が終了し、その後の懇親会の席での話である。

日本は少子高齢化が進展し、このままだと50年後位には日本人は絶滅危惧種になってしまう、という話をしたところ、ある人からこういう意見をいただいた。
「そういう風にはならない。日本の若者は変わってきている。もう我々のような年配の人に期待はできないが、そういう若者が日本を変えてくれる筈だ」と。
その人はあるボランティア活動の集まりの中で、若者が被災地等で積極的に活動をしていることを見聞きしたことで、若者の中に変化を見出したようであるが、本当にそうなのだろうか?
日本の若者は変わってきているのだろうか?

お酒の席でもあることからそれ以上の深く聞くことはさけてしまったが、何かシックリこないもの感じたのである。本当にそうなのか、そうであれば嬉しいし、これからの日本に期待することも大きいものとなるのだが。

以下は、実際の若者から聞いた話である。それは次のような話であった。

ある大学生の話。その学生は、W大法学部に在学し、在学中から世界のいろいろな国を訪問し見聞を広めていたそうだ。その活動の中には、バングラディシュ・グラミン銀行でのインターンシップの活動も含まれており、今話題の病理保育を行っているNPO法人での活動も積極的に行っていたということである。
そういう彼の活動内容を聞いていると、卒業後の進路は、後進国の成長・開発を支援するような事業や仕事に就くか、育児や介護といった弱者を支援するようなビジネスを行うのではと想像したのだが、そんな彼が選んだ就職先は、コンサルタント会社「マッキンゼー」であった。

更に、別の学生の話。その学生は、就職を希望する業界としてメディア、主にテレビ関係を中心に就職活動を行っていたそうである。残念ながら、希望するテレビ関係の会社に合格するに至らなかったため、就職浪人を決意したそうである。そういう中で発生したのが東日本大震災である。
その災害に接して、彼は、「今、自分はこんなことをしている場合ではない」と感じ、就職活動を中断し、東北での6ヵ月間のボランティア活動に参加したのである。周囲の人はその行動を見聞きし、この震災を契機に意識や考え方が大きく変わったのでは、という印象だったそうだ。
6ヶ月経過後、再び、翌年の就職活動に臨み彼が選んだ就職先はどういう業界を選択したと想像されるだろうか。彼が選んだ就職希望先は、「テレビ関係」の会社だったそうだ。

この2人に共通することは何か、「結局、金でしょ!結局、ブランドでしょ!」ということではないだろうか。
ボランティア等の活動をしている時には、その活動に没頭しているためあたかも意識が変わったように見えるが、冷静に考えてみると何も変わっていないというのが真実のようだ。

きっと、冒頭で話をした人も、ボランティア活動の集まりの中で見た若者の一瞬の光景を通じて、全てを判断してしまったのではないだろうか。
人は簡単に変わらないし、変わったと見えたとしても、それを日々の行動の中で確認していく必要があるということのようだ。