リーマンショック以降、顕在化してきた就職難。この就職難は、リーマンショックという未曾有の金融危機のもたらした弊害と思われていたが、本当は、人材マネジメントの新しい流れの中で生じてきたものではと考えている。
大学全入時代に突入し、大学を卒業する若者約60万人、それに対して就職者数約30万人ということで、30万人前後の未就業者ギャップが生じる状況がここ数年続いている。この30万人の未就業者の原因が、金融危機であり、デフレによる消費の低迷であり・・・と言われていた。そのため、金融危機が去れば・・、或いは消費が拡大すれば・・、雇用も拡大するという想定で全てが考えられているが、この前提を疑ってみる必要はあるのではないか?
果たして、デフレから脱却して消費が拡大しても、雇用はもとの姿に戻るのだろうか?
それに関して、ここ数年の学卒者の傾向を考えてみたい。これはネットでも書かれていることなので周知のことだと思われるが、『内定を取得する学生は幾つも内定を取得し、内定を取得できない学生は、ESの段階から全くダメ』という現象である。これは、何を意味するのか?企業は雇用したいという意欲は持っているが、その意欲というのは一定レベル以上の人材に向けられており、それ以下の人材に対しては雇用の必要性を感じていないということになる。一定レベル以上の人材の評価軸が何かということは議論の余地があるであろうが、内定が一定の学生に集中するという現象を、少し分析すれば企業が欲する人材像が浮き彫りになる筈である。(学校の就職課としては、内定を複数取得した学生に協力してもらい、リアルに就活を語って貰い、その傾向を分析すれば、翌年の就職活動の参考になる筈なのに・・・しかし、そういうことをやっている大学は聞いたことがないし、従来通りの自己分析やキャリアセミナー等古めかしい方法を継続しているようだ。キャリアセミナーを担当している講師は就活の現場を知ってる訳じゃないので、理想論でしか語れない。第一、内定を複数取得した学生はそういうセミナーに参加してないだろ。もうそういうセミナーはやめた方がいい。学生のため良かれと考え続けているなら、現実逃避そのものじゃないかと思う)
就職できない学生を一定期間雇用し、その期間は一定額の給与を支給しながら、企業に紹介派遣として体験的に雇用してもらうということも実施されているが、問題は就職できなかった学生と内定を幾つも取得した学生の違いを理解した上で、対応していかないと紹介派遣で働いていても、正社員として雇用される保証がどこにもないということである。紹介派遣を続けていても、中々正社員になれないという理由が何処にあるのかを把握する必要もある。
このような状況を考えた時、雇用される側は企業の人材マネジメントの考え方がハッキリ変化してきたことを理解しなければならない。それは、就職や能力開発等(弊社も含めてであるが)の事業を行っている会社にとっても同様であり、企業のニーズにマッチしないサービスを提供していくことは、結果として、売上の減少や取扱件数の縮小ということになってくるのである。