Column コラム
2012-4-6

ちきりんさんと藤野英人さんの対談:「これからの日本のついて、自分のアタマで考えよう」の記事を読んで、思い当たる事もあり考えてみました。

対談の記事は、下記のURLです。
http://diamond.jp/articles/-/16881

お二人の対談にもあるように、最近の学生気質や就職事情を読んでいると、海外への転勤は好まない人や大企業、公務員を志望する人が増えていると聞きます。ネットの記事やtwitterとかのつぶやきを読んでいると、給与が少なく、労働時間が長い企業は、一律で「ブラック」企業となっているようです。(これは、前年度、長男が就職活動をしていた関係もあり、リアルに情報として入ってきていました。だから、何かあると"ブラック"になるということです)

自分達が会社に入った時期は、高度成長期も終焉を迎え、第一次、第二次オイルショック後の入社であり、それなりに厳しい環境だったことを覚えています。その時は、今ほど企業に関しての情報はなく、業界紙や新聞等で知る程度の情報でした。そのため、自分が入社する会社が、一体どのような評価を得ているのか、労働環境はどうなのか等々知る由もありませんでした。

当然、会社に入る前と入った後に知らされるギャップはありましたが、それはどの企業でもあることと受け止め、働くことで組織の中で評価してもらおうという気持ちはあったと思います。同級生が別の会社に入って、いい給料を貰っているという話があっても、それは自分とは関係ないという感じでした。

労働することについて、お二人の対談の中に次のような発言がありました。

『僕が言っているのは、一所懸命働くことを是とする会社を、一律に「ブラック企業」とか呼ぶ風潮に対する疑問です。それは、「労働というのは、ストレスと時間とをお金に換えている」というような考え方であって、今、こうした労働に対するすごくネガティブな価値観が急速に広がっている気がするんです。
これって、ものすごく古びたマルクス主義じゃないですか。資本家がいて、労働者を搾取しているという価値観。働くということは、時間とストレスの代償としてお金をもらうことだから、なるべく労働時間は少ないほうがいいし、残業はない方がいい。でも、そうした考えの人は、働くことの充足感があまりないんです。そして、彼らは変に理論武装していて、こちらが働くことの充足感を伝えようとすると、「資本主義をうまく働かせるために、そういう幻想を振りまこうとしているんだ」と反論してくる。』

つまり、冒頭の若者の気質と共に考えると、労働とは「できるだけ短く労働し、できるだけ少ない残業で、且つ安定して、出来れば知名度もある」方がいいという価値観のようです。
一時、ネットでワタミの社長の発言がかなり攻撃されていました。確かに、ワタミの社長の発言も社員の自殺ということへの反省の色がないという点では問題はありますが、多分、ワタミの社長が自身の経験の中で労働から充足感を感じたことがあるから、それを伝えようとしたのでしょう。でも、炎上してしまいましたが。

30歳までに必須と言っていい位、若い人に経験してほしいことが、実は、この「労働の中に充足感を感じること」です。残念ながら、この「充足感」というのは、簡単な仕事や短時間の労働で感じることは難しく、ある程度、自分に質・量の面で負荷がかかるような仕事の中で経験していくことになります。
こういう点からも、昨今の労働時間の長さに関する否定的な意見、ストレスが係るような仕事の否定、等々充足感を感じることができる機会がどんどん減ってきていることには懸念しています。

最も能力の伸長が望める20代は、どんどん仕事にシフトしても良いと考えています。
この年代は、24時間仕事のことを考えても良く、そうしないと充足感を感じることができない筈です。
画一的な「ワーク・ライフバランス」の考え方も影響していると思います。全ビジネス・ライフを通じてバランスしていることが好ましいのであって、どこの年代をとってもバランスしている必要はない筈です。

今の若者の労働観がそういう経験を避けるような風潮にあるということが、とても残念でなりません。