昨日の日経新聞には、65歳までの雇用の義務付けの記事が掲載されている。
改正法の内容は、次の通り...60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案が29日、成立する。来年4月から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるのに対応し、定年後に年金も給料も受け取れない人が増えるのを防ぐ狙い。2025年度には65歳までの雇用を義務づける....と内容だ。
この改正は、年金財政改善のための年金受給開始年齢の引き上げの結果、65歳迄無収入になる人がでるのを防ぐための改正と言われているが、反面、若年層の雇用を阻害する改正だとも言われている。企業の中で最大の経費は人件費であり、それを抑えることが経営者には課題となっている。65歳までの延長により増加する人件費は、全体雇用の削減で賄うしかない。そう考えると、若年層にシワ寄せ行くであろうと想像するのが自然である。人件費の増加に伴う売上の拡大が望めない今の状況に至っては、仕方がない結果である。
一方で、政府は若年層の雇用促進も実施している。今回の雇用延長が若年層の雇用に影響を与えないと考えたのだろうか。非常に縦割り主義の考えである。雇用延長施策の必要性を述べながら、一方では若年層の雇用促進策を打ち出している。共に雇用の側面ではあるが、それを受け入れる側の状況を全く考慮していないと思わざるを得ない。
企業は国内需要の低下とより低コストでの生産を目指して海外に進出しようとしている。これは、取りも直さず、国内における雇用機会の減少に繋がってくる。企業が将来の活力を維持するため若年層を雇用したいと考えても、60歳定年による労働者の入れ替え等ができない状況になったのである。
政府としては、将来の成長を見込んで税収の増加を試算しているのであろうが、こういうアンバランスな政策を取っていては、将来の成長は到底見込めない。需要が回復しない限り、所得の伸びず少子化の解消も望めない。このままでは日本全体がシュリンクして行くのを待つばかりである。
今の政府の施策が間違っているのか、日本における構造的な問題なのか、引き続き考えて行かなければならないテーマである。
将来の日本をどの方向へ導いていこうとするのか、ビジョンを明確にして、そのために抑える部分と伸ばす部分を外に対して提示し説明しない限り、残された道はないように思う。