Column コラム
2012-7-16

 今日の日経新聞に「人材育成、企業が注目の大学 国際教養大が首位」という記事が掲載された。その記事内容は

- - -  主要企業の人事トップに「人材育成の取り組みで注目する大学」を聞いたところ、秋田県の公立大学、国際教養大学が首位になった。同大は留学義務付けや教養教育の徹底で知られ、2位の東京大学の3倍近い支持を集めた。3位は多くの留学生を集める立命館アジア太平洋大学(APU)。
35社に選ばれた国際教養大は2004年に秋田市に開学。ほぼすべての授業を英語で行い、学生に1年間の海外留学や国内の寮で外国人留学生らと共同生活することを義務付けている。00年に大分県別府市で開学したAPUは10社が選んだ。APUは外国人留学生が学生の約半数を占め、学部講義の約80%を日本語と英語の両方で開講している。

更に、「新卒者を採用する立場から大学教育に求めるもの」(3つまで回答)を聞いたところ、1位が「教養教育の強化」(78社)、2位が「コミュニケーション能力を高める教育」(67社)となった。このほか、「在学中の留学支援」(34社)が4位となるなど、国際教養大、APUが注力する教養や国際性を向上させる内容が高く評価された。  - - -

このアンケート結果から、やはり国際性や教養を備えた人材への企業の期待が強いということがわかる。
早稲田、慶応という人気大学を抑え、秋田や大分にある大学が注目されていることは興味深い結果だが、それほどまでにこの2つ大学の教育内容が企業が求めるものにマッチしてたという証左であろう。逆に言えば、その他の大学の教育内容は、いかにマッチしていないかということ現れである。

期待されている項目の一つ、「教養教育の強化」という面では、何も外国に留学する必要もないし、外国人と1年間同居生活をする必要もない内容の筈だが、今の大学でこの面を強化することができていないのはどうしてだろうか?
講義のカリキュラムは教授会の意向が強く反映され、講師陣は自分の研究や論文を発表するために大学に籍を置いているという感が否めない。現に、学会等では競うように研究や論文を発表するのは准教授や講師という立場の人である。何よりも教授や準教授への昇進のためのポイント稼ぎの場と化しているのが今の大学であろう。この中に「教養教育」が入り込む余地はない。

教養という面で、大学は、学生に自主的な研鑽を求めているのであろうが、高校まで詰め込み型の教育を受けてきた人間に対して、いきなり自ら進んで学ぶことを期待しても土台無理な話である。結果、あっという間に4年間を過ぎ、そのまま社会に出ていくことになる。そんな学生に対して、企業も高い理想を求めすぎている。
では、この教養教育は企業に求めることができるだろうか。20年前までの企業内教育であれば可能だったであろうが、即戦力が求められる今は難しい。よって、教養教育は大学に求められるべきである。

「教養教育」と「コミュニケーション能力」 - -  企業が求めるこの上位2項目には関連性があると考えられる。教養教育は自己学習だけではなく、周囲からの情報や知識をもとに形成されることが多いからである。そのために、それなりのレベルの人と会話できる能力は必須だろうし、その行為を通じて教養も身に付くからである。

国際教養大学とAPUでは、多様な文化的背景を持つ人とのコミュニケーションを通じて、入手される情報が教養を高める役目になっているのではと考える。コミュニケーションを通じて、文化的背景等を包含した教養を身に付けることは難しくない筈である。

東大を初めとしていろいろな大学で秋入学の導入が検討されてくる。秋入学のみで企業が期待する2つの項目を実現できるとは思えないが、国際教養大学とAPU以外の大学では、これまでの画一的な教育システムの改変にも繋がり、企業が大学教育に求める項目を実現できるのであれば、非常に面白い取組になるのではと考えている。