Column コラム
身近なモチベーション3.0
2010.8.20

ダニエル・ピンクのモチベーション3.0が話題である。書かれている内容はなるほどと思わせる内容だ。自らが人事部門で推進、経験してきたことは、モチベーション2.0の世界に属しており、もはや機能しなくなっている。企業の人事部門のメンバーから見ると、この考え方は革命そのものだ・・・と

そういうことを考えながら訪問した会社でモチベーション3.0が活かされたキャンペーンのポスターを発見した。
それは、健康保健組合が作成した組合員に対する『ウォーキングキャンペーン』。ポスターに書かれている主旨(詳細に読む時間がなかったので概略だけ)は、「組合員の健康のために、健康保健組合がウォーキングのキャンペーン実施!」という内容である。対象は、組合員本人及び組合員の被扶養者。最近、健康保健組合では治療と共に予防の観点から、メタボリックシンドロームに対する取り組みが行われており、今回もその一環と考えられた。

キャンペーンの内容は、歩いた距離に応じて、健康器具やレジャー施設のチケットがもらえるという内容と思っていたが、それ以降の仕組みが他と若干異なっていた。
歩く距離に応じて・・・までは通常と同じだが、この会社は歩く距離に応じて、『健康になることで途上国の人にも皆さんの健康を届けましょう』という内容であった。具体的には、歩く距離に応じて、飢饉の地域には食料の援助を、衛生面で問題のある地域には伝染病の予防接種等の支援策を提供するというものである。

通常であれば、ウォーキングを通じた"健康"という面と距離に応じた"ご褒美"という2つがセットになってウォーキングを促進するが、実はどちらも「自分」への利益に他ならず、インセンティブとしては、外発的動機付けの仕組みそのものであった。モチベーション3.0の世界でいう3つの要素の一つ、目的の部分が欠けていた訳だ。その目的の部分を途上国の人の健康のため・・という大きな目的としてウォーキングを行うとした訳である。(所謂、やる気を出させる仕組みとして組み込まれている)

キャンペーン期間は、今年の9月1日からスタートする。
企業としては、グループ会社を合算すると全世界で100000人を超える大企業である。このような大企業の身近な活動の中からも、モチベーション3.0の考え方を活かすことができる。この活動の結果を、是非、知りたいと思う。