日本能率協会が纏めた今春の新入社員(セミナー参加者約1300人の新入社員を対象)の意識調査の中で、『海外赴任をしてみたい』と答えた人が初めて5割を超えたという結果が出ていた。
その理由(複数回答)として、「国内では経験できない仕事にチャレンジできそう」が85.4%、「今後の自分自身のキャリア形成に役立つと思う」が63.4%と多く、海外経験を前向きにとらえる理由が多かったとのこと。
海外赴任について尋ねるのは今回が2回目。赴任「してみたい」人は50.7%で、前回の2011年調査より5ポイント増えた。一方「したくない」は48.8%で同4.3ポイント減った。海外に行ったり在住したりしたことがある人では、海外赴任を「してみたい」人は66.1%と、より高い傾向が出たと言う。
逆に、海外赴任を望まない人にも理由を聞いたところ、「言葉が通じるか不安だから」(54.1%)が最も多く、「治安や食生活、衛生面で不安を感じるから」(51.6%)と続いたそうである。
昨年までと異なる点は、今年の調査で初めて海外赴任したいと考える新入社員が50%を超えたことである。
しかし、本当はその詳細が知りたいところだ。気になるのは、新入社員が考える海外赴任先が、先進国、所謂、欧米を中心に考えているのではないかということである。
今、まさに企業が海外に進出し、これから拡大していこうとしているのは、BRICSと呼ばれる新興国やアフリカ等の後進国である。勿論、ヨーロッパやアメリカ等先進国にも出先はあるだろうが、それらの国は今以上拡大する可能性は少ない地域である。
更に、アジアでも、上海や香港、シンガポールと言った比較的進んだ地域ではなく、タイ・インドネシア等これから成長が期待できる地域が企業進出のターゲットとなっている。ベトナム、インド、バングラデッシュもこれから成長する地域であろう。
新入社員が会社に入るまで、父親の仕事の関係とか旅行で行った地域は、どちらかと言うと「先進国」が多い筈である。(当然、企業もいままでは先進国に軸足を置いていたため)所謂、新興国や後進国で生活したり、旅行で訪れたりすることは少なかったのではないだろうか。
今回の調査結果から推測されることとして、企業が進出しようとする地域と新入社員の赴任したいと考える地域のミスマッチがあるようでならない。インターンシップでバングラデッシュに1か月以上滞在した学生の感想からも、現地の生活面ではなかなか厳しいという印象である。
就職ミスマッチで入社後1,2年で退職という記事が頻繁に取り上げられているが、これからは海外赴任ミスマッチで赴任先になじめずに退職ということが記事が上がってくることも十分に考えられる。